◆株式譲渡のご案内◆
いやー、DD(デューデリジェンス)って大変だったぞー。
デューデリジェンスとは
DD(デューデリジェンス)っていうのは株式譲渡(M&A)に先立って、その企業の法務、財務、労務など、様々な観点からしっかり事前調査をして、その会社に問題がないかどうかをはっきりさせる作業なんだけど、それがまぁ全体で数百もの質問項目があって、それにそれぞれ資料添付したりして、きちんと回答しなければいけないってやつなんだ。
なんせこっちは70名足らずの会社だし、それを担当できる人間も限られてる。
そこへ世界4大会計監査会社やら、世界有数の法律事務所やらがよってたかって質問攻めに来たもんだから、悪戦苦闘してしまったよ。
まぁなんだな、世界一の会社に株式譲渡するって事はこういうことなんだなあ(笑)
というわけで、みなさんお久しぶりです。 株式会社ビジュアルアーツのまだギリギリ社長、馬場社長(ギリ)です。今日はみなさんに大切なご報告があって、VAブログを更新することにしました。
今回のはあまりコンテンツに関係ない話だけど、ビジュアルアーツの未来について、みなさんにしっかり報告したいことがあるので、ちょっとばかりおつきあいをお願いします~。
■馬場は引退します
結論から言うと、私は社長を引退し、株式会社ビジュアルアーツの株式譲渡を行います。
こういうと、経営がうまくいっていないように聞こえるかもしれないけど、決してそうじゃあない。
ここはあえて言わせてもらうけれども、当社はご存じの通り、この6月期決算もヘブバンはじめスタッフの頑張りで、33年の歴史上過去最高の収益を上げ、かつてない絶好調なんだよね。
じゃあ、なんで私が引退するかっていうと、これはもうハッキリしていて、人間にはどうしても「寿命」ってのがあるから、なんだよなぁ。
私もできることなら永遠に、この素晴らしい会社を経営していきたいよ。だけど、さすがに私も当年とって63歳。もちろん、今は健康そのものだし、まだまだ仕事もしたいけど、もはやいつ何があってもおかしくない年齢になってきたんだよね。
んでもって、私の身にもし「何か」があった場合、当社は株式会社とはいえ、馬場家が100%の株を保有している私企業だし、ふさわしい後継者もいないため、会社をたたむしか方法がない。
そうなれば企業の活動や未来はもとより、素晴らしい作品たちや楽曲の権利も、雲散霧消してしまいかねない。いや、それはなんとしても避けなければならないんだな。
こういう場合、株式会社としての正しい出口は、上場を目指すことだ。そうすれば、社長になにかあっても、株はたくさんの人が分散して保有しているから、会社の経営は比較的安泰なんだな。もちろん、そうやってる優秀な企業さんはいくらでもあるし、ウチもそれを目指せないわけではないけれど、これまでのお気楽経営がたたって、それはどうやら間に合いそうにない。
となると、次善の策はしっかりした「上場企業の親会社」を持つ……ってことになるわけだ。
それでようやく、私の健康が事業継続の最大のリスクになっている現状は改善されるわけだな。こいつを法的には「株式の譲渡」と言うんだけど、つまり企業のオーナーが法人で、大企業であればあるほど、未来は安泰になるわけですよ。もちろん、ビジュアルアーツはビジュアルアーツのままで、ね。
■相手は世界一のエンタメ企業
というわけで、私はこれまで複数の企業さま、親会社候補さんたちを厳選し、アプローチしてきた。
そして、スタッフたちが悩みに悩んで選び、その結果、契約締結合意にまでいたったのは、世界一のエンタメ&ゲーム会社さんである、この企業さんだった。
そんなわけで、株式会社ビジュアルアーツは、私の引退と未来を見すえて、このグローバル企業への株式譲渡、すなわち子会社となる事を決断したんだ。
■スタッフたちの思い
まあしかし、今だから言えるけど、この間、実に様々な企業さんを候補として検討し、交渉をしてきたんだよ。
形式的にはM&Aなんとかみたいな中間業者等も通さず、私とスタッフが考え、ビジュアルアーツの未来にとって最も良い会社を選定してきたんだけど、なんといってもその基準は、ビジュアルアーツやKeyが
「世界に通じるIPを創造する」と言う、コンセプトを生かせて、しかもできるだけわれわれのコンテンツや会社を愛してくださり、そしてグローバルな視点で、世界にコンテンツを発信できる企業さんであることだった。
そしてもちろん、最終的な選定は、当社のシニアクリエイターや役員たちが幾度もの面接を経て、勇気をもって行った結果なんだよ。
だから、自信を持って言える。これはわれわれの愛すべきコンテンツや楽曲たちが、私の死後も遺失や離散することなく効率的に管理され、会社が今までと何ら変わることなく続く状況をしっかり模索した結果、…ってことなんだな。
■これから目指すこと
と言うわけで、ビジュアルアーツはビジュアルアーツのまま(ここ大事)、これからもスタッフがやりたいことを続けていけることになりそう。
もちろん、やるべき事は、さっきも言ったように、「世界に通じるIPを創造していく」ことにあるから、ビジュアルノベル、キネティックノベル、モバイルゲーム、アニメ、ライブやイベントなどなど、今までやってきたことを、そのままやっていくことになるんだけど、それはきっと素晴らしいことになると思うんだ。
なんといっても親会社は世界最大とも言われる超巨大ゲーム会社だから(ホントかどうかはデカすぎて私もよく知らん)、そうそうおかしくなる事は無いだろうし、今後われわれがやることについても、必要なバックアップはしてくれるみたい。
2023年3月全世界モバイルゲーム売上ランキングTOP 10
もうすでに何件か大きな資本が関係する案件も舞い込んでいるみたいだし、われわれがやりたいこと、みなさんを感動させるコンテンツ・ゲームだって、グローバルなジャンルで展開できると思う。
もちろん日本にたくさんいる優秀なクリエーターを確保して、待遇をこれまで以上によくして、人材を育て、日本のコンテンツを世界に向けてしっかりと発表していくようになると思いますよ。どうかご期待ください。
■それでもVNはえいえんなり
ここらで、ちょっぴり自画自賛させてほしい(笑)
思えば、創業以来33年のあいだ、我々のコンテンツは、ビジュアルノベルと呼ばれるようになり、そのキャラクター性や世界観、そして感動的な物語は、世界中の人たちに受け入れられてきた。
ほとんど死滅していたジュブナイルを復活させ、主人公が様々な悩みや葛藤を抱えながら、みずみずしい、少女との関わりを経て、世界と試練を乗り越えていく感動の物語を、こうやって一般化してきたのは、ほかならぬ、われわれビジュアルアーツだったんだ(と思いたい)
そしてKanon、AIR、CLANNAD、planetarian、リトルバスターズ!、Rewrite、 Angel Beats!、Summer Pockets、プリマドール、LOOPERS、LUNARiA、終のステラ、ヘブンバーンズレッドや偽りのアリスなどなど、モバイルゲームにいたるまで、そうした感動させる物語系の創作体制は、いつの間にやら、世界でも唯一無二の強みとなってきた。
まさに、ゲーム業界に求められているキャラクター性と物語に関していえば、当社ほどしっかりとした企画力と正しいアプローチで制作できる会社は他にないと、自信を持って言えるんだよね。
キャラクターをたてて、彼らを魅せるシーンを積み上げて好きになってもらい、そのキャラクターが大勢活躍する世界を創り、そしてその物語全体がやがて感動にいたる。それを正しく認識して、やれる会社は、当社が世界一だと思うんだな。
まー私自身は、これまでも当社に在籍する優秀なクリエーターに乗っかって実に楽な経営をやってきただけで、たいしたことはなにもやってないけど(すまん、上場できなかった無能社長で)、彼ら、シニアクリエーターが築き上げてきたものは、うちの大きな財産になっているし、今後も彼らが中心となって、みなさん方を感動できるコンテンツに仕上げていくことは間違いないと思う。つまりVNから始まった物語系コンテンツは、さまざまなメディアに展開されて、いつまでもえいえんなり、なのだ。
■麻枝がえらい
とは言え、こういう会社になれたのも、そして過去からの様々なコンテンツが世界の皆さんに受け入れられたいのも、われらがクリエイターたちのおかげである。これはもう、なんといっても、麻枝がえらい。
まぁ、上でも言ったけど、ぶっちゃければ、彼らのようなクリエイターを擁していれば、こんな楽な経営は無いわけで(笑)、彼らが望むものしっかり作って世に頒布するだけで、私は銀行からお金を借りることも、給料の支払いに困ることも一切なく、長年経営をやってこれた。麻枝がえらい。
そんな麻枝 准がふと漏らしたのは、
『こうなったのも、ヘブンバーンズレッドのおかげでしょ?』
いやもうまさにその通りだよね(笑)。
思えば、こーゆー有利な交渉で当社を株式譲渡させることができたのもヘブバンとユーザーさんたちのおかげ。だからこそ、ヘブバンのユーザーさんにも、協業としてこのむずかしい集団とおつきあいいただけたWFSの柳原社長にも、柿沼P(現グリーエンターテインメント社長さん)にも、下田(開発統括)さんにも、心から御礼を申し上げたいし、そして、ずっと今後もヘブバンを一番に、これまで以上にしっかりやっていきたい。
柿沼P小沼D&麻枝がえらい。
■いろいろ計画中
とまぁ、そんなこんなで、みなさんには、ほとんど関係のない経営的な側面で、当社は大きな前進を果たすわけだけど、中身(やること)についてはほとんど変わりはないと思う。
今まで通り、いや、それ以上に、しっかり物語の品質を上げ、継続的に感動できる物語をしっかり作っていきたいと思っていますよ。
もちろん、そのためにはいろいろ計画中でもあります。
詳しくは新社長↓に譲るとして、これまでのユーザーさんへはきちんとご安心いただけるよう新作のビジュアルノベルを発表したり、アニメを発表したり、モバイルゲームの新作を発表してもらいたいと思う。
それが今まで支えてくれたファンのみなさんへの「恩がえし」だと思うし、ビジュアルアーツやKeyのコンテンツを間違いなく、今後も伸ばしていけることに一番近いと思うからね。
■私?
ここらで会社のシン体制や、ギリ社長である私の今後についてもちょっとだけ説明をしておきたい。
こんな感じ↓
社長(PN) | |
馬場 隆博(vavaしゃちょー) | 退任 → 相談役 |
天雲 玄樹(丘野塔也) | 新社長 |
高橋 澄子(miriko) |
岡本 学(魁) |
前田 純(麻枝 准) |
一ノ宮 知貴(藤井きゅん) |
山田 耕輝(紺乃瀬那) |
まず、経営体制としては、天雲新社長と執行役員らに任せ、私は相談役として、しばらくサポートに徹したいと思う。てか、もう老害は必要ないしね。
もちろん、皆さんとのおつき合いはこれまで通りですし、イベントや宣伝放送なんかもしっかりがっちりやっていきますよ。
でもまあ腕組みして社長写真とってるようじゃ、昭和のブラック企業にしか見えないし、これからの人材募集だってやりづらい。新たなコンテンツへの口出しなんか、もってのほかじゃない?
いっぽう、特にユーザさん、カスタマーさんへのサービスには、目を光らせながら、しっかりその辺は見ていきたいと思っていますから安心してね。
補記1
なにごとも終わらずにはいられない。であるなら美しくいきたい。というわけで、私は引退することにしました。しかし、そこから生まれることもあるわけで、しばらく休んだら、いずれは今までお世話になった業界のみなさんに恩返しをしよう。さしづめ、日本のIPやアニメの振興を目的として財団法人でも立ち上げるか。
補記2
お気づきの方もあるやもしれぬが、本文の「麻枝がえらい」は敬愛する筒井康隆先生の小説『ビアンカ・オーバースタディ』あとがきのパロディーである。私は小説が好きで、暇になったら書きたいとも思っているのだ。実を言うと、それが昔からの夢でもある。
補記3
新社長である天雲は就学後当社に入社した言わば生え抜きである。彼を次の社長にしようかと思ったのは、今から20年前の東京支社設立の時、上京する新幹線の車中だった。こういう生真面目で意思の強い男が育って、次の社長になってくれたら嬉しいな、と思った。
補記4
クリエイターとしての賛辞は麻枝は当然として、魁先生にも大いに贈りたい。今のビジュアルアーツがあるのは、彼の功績であり、彼なしでは成立しない。これは全社員が感じていることだろう。実は魁先生、えらいんです。
(文責:VISUAL ARTS/vavaしゃちょー)
https://twitter.com/vavasyatyou/